香りの散歩道


誰が袖

墨絵・朝野泰昌
近頃は「季節の変化が分かりにくくなった」と言われますね。
それでも、夏は終わり、短い秋が来て、冬の足音が聞こえると、街ゆく人の装いも変わります。

身につける香りも、あたたかみのあるものに変えて、和のテイストが楽しめる匂い袋をしのばせてみませんか。

香水に名前があるように、匂い袋にも風流な名前がつけられています。
たとえば、誰かの袖と書いて、「誰が袖(たがそで)」。
『古今和歌集』に収められている、よみ人知らずの和歌に由来するネーミングです。

色よりも香こそあはれと 思ほゆれ 誰が袖ふれし 宿の梅ぞも

(いろよりも かこそあわれと おもほゆれ たがそでふれし やどのうめぞも)

梅の花は、その色彩よりも香りのほうに趣を感じる。
これほど素晴らしい香りがするのは、誰か高貴な方の袖が花にふれて、着物に焚きしめてあったお香の移り香(うつりが)が、ているのだろうか・・・という意味です。

この歌の影響によって、室町時代には、「誰が袖」という匂い袋が大流行したとか。
当時は、着物の袖の形をした小さな袋にお香をいれて、袂(たもと)にしのばせたり、腰から下げたりしていました。
それが今に伝わって、いろいろな形の匂い袋に、「誰が袖」という名前がつけられています。

これからの季節は、あたたかみのある匂い袋の香りで、ほっこりするのもいいですね。


*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。


『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、

毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。



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