香りの散歩道


ナルシストの語源

墨絵・朝野泰昌
「朝野家 香りの散歩道」この番組は、山陰 湯村温泉、朝野家の提供でお送りします。
今日のお相手は、私、木村匡也です。


冬に咲く花には、寒さに耐えぬく生命力と、凛とした美しさが備わっていると思いませんか。
イギリスの湖水地方に生まれ、自然をこよなく愛した詩人、ウィリアム・ワーズワースが、「銀河に輝く星の群れのようだ」と称えた冬の花があります。
それは、湖のほとりに列をなして咲いていた、黄金色(こがねいろ)の水仙(すいせん)です。

無数の水仙が風に揺れている光景は、踊っているように見えた、とワーズワースは詩の中で語っています。
水仙は、透明感のある香りを遠くまで届ける花でもあり、その場所にはきっと、ワーズワースの心を躍らせるような香りが漂っていたことでしょう。

すーっと伸びた緑の葉っぱに、黄色い花をつける水仙は、ギリシア神話にも登場します。
ある日、ナルキッソスという名の美しい少年が、泉の水に映った自分の姿に恋をしてしまいました。
そうとは知らない彼は、水鏡(みずかがみ)をのぞき込んだまま、恋しさのあまり、その場を離れることができなくなります。

そして、とうとう水辺に咲く水仙の花に姿を変えてしまった・・・というナルキッソスの伝説です。
この物語は、自分自身にうっとりする、「ナルシスト」という言葉の語源になったとか。

イギリスの詩人ワーズワースが、きらめく星にたとえた水仙の花は、神話の時代から美しさの象徴だったのですね。

*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。

1月分は現在放送中に付き、もう少々お待ちください。


『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、

毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。



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