6月の雨に洗われて、美しく咲く花たち。 彩りの豊かさなら、「七変化」という別名を持つアジサイ。 香りの良さなら、クチナシがこの季節を代表する花かもしれませんね。 初夏に白い花を咲かせるクチナシは、春に薫るジンチョウゲ、秋のキンモクセイと並ぶ、日本三大香木(こうぼく)と呼ばれています。 その甘い香りは、はるか昔から多くの人をひきつけてきました。 明治時代、女流作家としての道を開いた樋口一葉(ひぐち・いちよう)も、その一人です。 クチナシという名前の由来は、一説によると、果実が熟してもはじけることがないので、「口がない」ということから、その名がついたとか。 樋口一葉は、クチナシをもの言わぬ花として、こんな歌を詠んでいます。 誰もかく あらまほしけれ この花のいはぬに人の なほもめづらん (だれもかく あらまほしけれ このはなのいわぬにひとの なおも めづらん) 誰もが、この花のようにありたいと思っていることでしょう。 何も言わないのに、人からこんなにも愛されているのですから・・・と、樋口一葉は思っていたのですね。 言葉にしなくても、人をひきつけるもの。 クチナシは、その甘い香りがあるからこそ、 時代を超えて愛され続けているのではないでしょうか。
*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中 ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。
6月分は現在放送中に付き、もう少々お待ちください。
*『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、
毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。