香りの散歩道


百穀春雨


墨絵・朝野泰昌



今日は二十四節気の「穀雨」ですね。穀物の穀に雨と書いて、穀雨。

この時期に降る春の雨は、あらゆる穀物を潤し、芽を出させることから「百穀春雨(ひゃっこくはるさめ)」とも呼ばれています。
はるか昔から、暦に記されてきた穀雨の文字は、田植えや種まきなどの準備に適した時期ですよ・・・と教えてくれているのですね。

江戸時代の俳人、松尾芭蕉(まつおばしょう)は、「春雨」という季語でこんな句を詠んでいます。

春雨や蓬をのばす艸の道 (はるさめや よもぎをのばす くさのみち)

春雨が草の道にしとしと降っていて、そこにはみずみずしい緑の蓬が育ち、春の到来を告げている・・・。
この句は、芭蕉が一時期居を構えていた、江戸の深川あたりで詠んだといわれています。
芭蕉の目に映ったその情景を思い浮かべると、春雨に濡れた土と蓬の匂いが、ふわりと立ちのぼってくるような気がしませんか。

蓬は、芭蕉が生きた時代には主に薬草として親しまれていました。
もともと生命力の強い植物ですが、その成長を助ける雨によって、さらにイキイキといのちを輝かせます。
そんな蓬のチカラにあやかろうと、先人たちは厄除けや縁起物の草餅にも、蓬を使うことを思いついたのでしょうか。

春雨や蓬をのばす艸の道

みなさんのまちでは、春を告げる草の道の蓬を、今も見ることができますか。


*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。

4月分は現在放送中に付き、もう少々お待ちください。


『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、

毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。



香りの散歩道TOPへ
 /  TOPへ  / 歳時記へ