香りの散歩道


恋する心とチョコレート 


墨絵・朝野泰昌

来週の火曜日、2月14日はバレンタインデーですね。

大切な人に贈るチョコレートの甘い香りに、心ときめく季節です。

日本にバレンタインデーがまだなかった時代にも、恋する心とチョコレートには結びつきがあったようで、こんな短歌も残されています。

「楂古聿(チョコレート) 嗅ぎて君待つ 雪の夜(よ)は 湯沸(サモワル)の湯気も 静(しず)こころなし」

この歌に詠まれたチョコレートは、お湯に溶かして飲むホットチョコレート。
サモワルとは湯沸し器のことです。

ホットチョコレートの香りを嗅ぎながら、君を待っている雪の夜(よる)。
湯沸かし器から立ちのぼる湯気も、ゆらゆらと自分の心のように落ち着かない・・・。
真っ白な雪に包まれた世界で、いとしい人を待ちこがれる思いと、チョコレートの甘い香りが溶け合う恋の歌です。

作者は、明治生まれの歌人・北原白秋(きたはら・はくしゅう)。
大正2年、白秋が28歳のときに発表した初めての歌集『桐の花』に収められています。

当時としては珍しい西洋の湯沸かし器・サモワルと、チョコレートを詠み込んだこの歌からは、北原白秋のハイカラな暮らしぶりも想像できますね。 
さて、今年のバレンタインデーには、恋する皆さんにどんな物語が生まれるのでしょうか。

雪の夜に飲むホットチョコレートのように、幸せな香りに包まれる日になるといいですね。



*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。



*このコーナーは毎週水曜日に日本海新聞で掲載しています



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