香りの散歩道


ひょうたんからコマ


墨絵・朝野泰昌
クーラーも扇風機もなかった時代、人々は暑さをしのぐためにさまざまな工夫をしました。

打ち水、すだれ、うちわ片手に夕涼み・・・。
チリンチリ〜ンという風鈴の音色とともに、軒先で緑の葉っぱが風にゆれる「釣りしのぶ」も、涼しさをもたらしてくれる夏の風物詩です。


シノブはシダの仲間の夏草で、乾燥しがちな場所でも耐え忍ぶ強さがあることから、その名がついたといわれています。
釣りしのぶは、このシノブと苔や竹などを使って、船や筏(いかだ)のカタチに仕立てたもの。
風鈴が付いているものは、軒先に吊るすと目にも耳にも涼しさを届けてくれます。
 
この風流な夏の楽しみを考え出したのは、江戸時代の庭師たち。
大名など得意先へのお中元用に作ったのがはじめといわれ、その後、明治から昭和初期にかけて、一般家庭にも広まっていきました。
 
今でも、ほおずき市や朝顔市などの縁日では、その姿を見ることができますし、盆栽を扱う園芸店などでも売られています。
買い求めるときには、釣りしのぶは生きものだということをお忘れなく。

植物を育てるのと同じように、乾いてきたら水をためたバケツの中に2、3分浸けてください。

そうすれば、青々とした葉っぱが風にそよぐ姿を、長く楽しむことができるでしょう。
 
緑の匂いも爽やかな、釣りしのぶで涼を呼ぶ小さな節電。お宅でもいかがですか。




*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。



*このコーナーは毎週水曜日に日本海新聞で掲載しています



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