香りの散歩道 |
子規忌 |
墨絵・朝野泰昌 |
「をととひの糸瓜(へちま)の水も取らざりき」 これは、明治時代の俳人、正岡子規(まさおか・しき)が、息を引き取る前日に詠んだ、絶筆三句のうちの一句です。 1902年、明治35年の今日、正岡子規は36歳という若さでこの世を去りました。 辞世の三句はいずれも、糸瓜を詠んだ句であったことから、9月19日の命日、『子規忌(しきき)』は、『糸瓜忌(へちまき)』とも呼ばれています。 |
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糸瓜から取れる水、糸瓜水(へちますい)は、古くは“美人水”といわれ、美肌をつくる化粧水として親しまれてきました。青い匂いがみずみずしい糸瓜水は、今でも、自然化粧品の代表として根強い人気があります。 加えて、正岡子規の時代には、「仲秋の名月の夜に取った糸瓜水を飲めば咳が鎮まる」という言い伝えがあり、旧暦の8月15日に糸瓜の水を取る習わしがありました。 けれど、肺の病いで病床にあった正岡子規にとって、糸瓜水ももはや効き目はなかったのでしょう。 「をととひの糸瓜(へちま)の水も取らざりき」 この句にある一昨日は、咳を止めてくれる糸瓜水を取るはずの15日でした。 最後に、明治の俳句に革新をもたらしたといわれる正岡子規の作品の中から、皆さんよくご存じの秋の名句をご紹介しましょう。 「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」 |
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