香りの散歩道




墨絵・朝野泰昌
今日は、ある魚の記念日です。
群れをなして泳ぐ姿が、秋の空に浮かぶ雲の名前にもなっているのですが・・・おわかりですか?
10月4日の10を、「いち」「わ」と読み、4「し」を加えて、イワシ。平安時代にはすでに、庶民に愛される食べものだったという、イワシの日です。

ただし、平安貴族など、身分の高い人たちは口にしない魚でした。
ところが、あの紫式部はイワシが好きだった、という逸話があります。

江戸時代に書かれた文献によると、夫の留守中にこっそり焼いていたところ、臭いで気づかれてしまい、「そんなものを食べるな」とたしなめられたとか。
すると、紫式部は、こんな歌を詠んだそうです。

日のもとに はやらせ給ふ いはし水 まいらぬ人は あらじとぞ思ふ
(ひのもとに はやらせたまう いわしみず まいらぬひとは あらじとぞおもう)

「いわしみず」とは、京都にある石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)のこと。
この場所を魚のイワシとかけて、日本中の人が石清水にお参りしているように、巷で人気のイワシを食べない人などいませんよ・・・と、和歌で言い返したのです。

この話には別の説もあり、イワシ好きだったのは紫式部ではなく、彼女と同じように宮中で働いていた、女流作家の和泉式部だったとか。
どちらにしても、栄養たっぷりのイワシが、名作を生みだすエネルギーだったのかもしれませんね。


*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。


『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、

毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。



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