香りの散歩道


旅をする木


墨絵・朝野泰昌



暑さ寒さも彼岸まで。

山陰にはまだ夏の名残りがありますが、海の向こうのアラスカは秋。
紅葉(こうよう)に染まるアラスカの秋は短く、一年の中で最も美しい季節とも言われています。

この地を愛した写真家、星野道夫(ほしのみちお)さんは、九月にアラスカの原野を歩いた時のことを、『旅をする木』という本に綴っています。

「北国の秋の美しさはたとえようがありません」と星野さんは書いていますが、山道を歩きながらブルベリーの実をほおばり、丘の上から目を凝らすと、冬を過ごすための森に向かうカリブーの群れが見える・・・。

そんな秋の情景が目の前に浮かんできて、自分も一緒にアラスカの原野を歩いているような気がしてきます。

そして、星野さんは、こんな思いを伝えてくれました。
「自然とは、何と粋なはからいをするのだろうと思います。
一年に一度、名残惜しく過ぎてゆくものに、この世で何度めぐり合えるのか。
その回数をかぞえるほど、人の一生の短さを知ることはないのかもしれません。
アラスカの秋は、自分にとって、そんな季節です。」

このエッセイが収められた『旅をする木』という本は、四半世紀にわたって多くの人に読み継がれています。

なかには、この本と出会ったことで、世界を旅したいと思うようになった人もいるとか。

星野道夫さんの『旅をする木』は、誰かの人生を変えた一冊でもあるのですね。


*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。

9月分は現在放送中に付き、もう少々お待ちください。


『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、

毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。



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