香りの散歩道


精進揚


墨絵・朝野泰昌



お盆休みにラジオを聴いてくださっている方も多いことでしょう。

さて、皆さんは「盆と正月が一緒に来たよう」という言葉から、どんな光景を思い浮かべますか。
楽しいことが重なってワクワクするときも、あれやこれやと忙しくて目がまわりそうなときにも、この言葉は使われますね。

家族や親戚と囲む、にぎやかな食卓の光景を思い浮かべた方。
そこに並んでいるのはきっと「盆と正月が一緒に来たようなごちそう」ではないでしょうか。

お盆の食卓には精進料理を・・・というお宅では、野菜を使った料理、たとえば「精進揚げ」とも呼ばれる野菜の天ぷらが、並んでいるかもしれませんね。

胡麻油を使ってカラッと揚げる天ぷらの歴史は、江戸時代の屋台からはじまったと言われています。
香ばしい匂いに誘われて、「ちょいと食べて行こうかな」と立ち食いができる、いわば江戸っ子のファストフードでした。

そのころ、胡麻や菜種から油をしぼる技術が発達して、食用油の生産量が増えたことも、天ぷらの普及にひと役買ったとか。

人気のネタは、海老や穴子など江戸前の魚介を揚げたもので、胡麻油の香りは、魚の臭みを消す役目も果たしていました。
その当時から、野菜を揚げたものは「精進揚げ」と呼ばれて、魚介の天ぷらとは区別されていたようです。

こんな話をしていたら、揚げ立てのアツアツを、サクッと食べたくなりそうですね。


*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。

8月分は現在放送中に付き、もう少々お待ちください。


『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、

毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。



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