水面を吹き渡る風の匂いがするような、池に浮かぶ睡蓮を繰り返し描いた印象派の画家クロード・モネ。
季節や時間とともに変化する陽の光を描いたその作品は、空の色や雲の動きまで想像させてくれます。
モネやルノワールなど、印象派の画家がパリで数多く生まれた背景には、当時、最新の移動手段だった鉄道の後押しがあったことをご存知ですか。
1847年、パリから港町のル・アーヴルまで鉄道が開通すると、人々の行動範囲は一気に広がりました。
セーヌ川沿いは行楽を楽しむ人で賑わい、暗いアトリエを飛び出して自然の光の中で描くことを求めた画家たちも、鉄道で写生旅行に出かけたのです。
モネは、パリの駅を描いた作品も残しています。
そのころ、モネが発表した作品は「単なる印象しか描いていない。
モヤモヤして何を描いているのか分からない」と、批評家から厳しい評価を受けていました。
皮肉を込めて印象派と呼ばれたモネは、「人間の目は何もかもくっきり見えるわけではない。
それなら、蒸気で何も見えなくなった駅を描いてみせる」と息巻いて絵筆を取ったとか。
陽の光がちょうどよく当たる時間に制作するため、駅長に交渉して列車の出発時刻を遅らせてもらった、という逸話も語り継がれています。
こうして生まれた作品は、光の画家モネの挑戦を物語る一枚になりました。
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