今日は「立冬」です。暦の上では冬の気配が現れるころ。
俳句の世界では、「冬立つ」「冬来たる」「冬に入(い)る」という季語も、立冬を表しています。
また、立冬の朝のことを「今朝の冬」という、なんとも美しい響きの季語もあり、日本語は本当に豊かですね。
立冬は、木枯らしが吹きはじめる季節ではありますが、地域によっては、まだ秋の盛り。
明治時代に活躍した俳人、正岡子規(まさおか・しき)は、立冬に寄せてこんな句を詠んでいます。
菊の香(か)や 月夜ながらに 冬に入る
菊の香りが漂う月のきれいな夜だけど、もう冬に入(はい)ったのだなぁ・・・と季節の移り変わりの早さを詠んだ句です。
実は、この句にある「菊」と「月夜」は秋の季語で、「冬に入る」は冬の季語。
このように、異なる季語がいくつも使われている句は珍しいようですが、それも、秋から冬への変わり目に詠まれた句ならでは。
ましてや、季節の境目がより一層わかりにくくなった、昨今の気候に慣れた私たちには、共感しやすい句かもしれませんね。
菊の香や 月夜ながらに 冬に入る
立冬の今日。
もしも、きれいな月が出たならば、この歌を思い出しながら眺めてみませんか。
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