香りの散歩道


新茶を味あうとき


墨絵・朝野泰昌



夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る~という「茶摘(ちゃつみ)」の歌でおなじみの八十八夜。
今年は今日、5月2日がその日です。

この時期に出回る煎茶は新茶と呼ばれ、みずみずしい香りは、野山に芽吹く新緑のような爽やかさがありますね。
気がつけば、いつも身近にある煎茶は、日本で最もよく飲まれている緑茶といわれています。

その歴史をひも解くと、煎茶を世に広めた「煎茶道(せんちゃどう)の祖(そ)」と呼ばれる人物がいたことをご存じですか。

その人物とは、売るお茶の翁(おきな)と書いて売茶翁(ばいさおう)と呼ばれた江戸時代の僧侶です。
現在の佐賀県で医師の家に生まれ、禅宗の僧侶となって各地をめぐり、長崎の地で煎茶を学んだとか。

そして、60歳を過ぎてから京都の鴨川のほとりに煎茶が飲める茶店(ちゃみせ)を構えたそうで、この店は日本初の喫茶店ともいわれています

売茶翁は自ら茶道具をかついで、桜や紅葉の名所にも出向いていたとか。
自然の中でお茶を煎じて、「代金はいくらでもけっこう。ただで飲んでもよい」と、客の身分や財力などは一切関係なく、誰にでも禅の心を説きながら煎茶を売り歩いた・・・。

そんな逸話が語り継がれ、当時はまだ上流階級の文化だった喫茶の風習を、庶民にまで広めたといわれています。
新茶を味わうとき、そんな歴史の物語にも思いをはせてみませんか。


*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。

5月分は現在放送中に付き、もう少々お待ちください。


『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、

毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。



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