香りの散歩道


万葉人の感性


墨絵・朝野泰昌



毎年一月に宮中で催される歌会始(うたかいかじめ)。
歌会とは、和歌の心得がある人々が集まって、共通のお題で歌を詠み、その歌を披露する会のことです。

今年の歌会始のお題は、語るという字を書いて「語(ご)」。
「物語」や「語感」などの熟語や、「語る」「語らふ」といった訓読みにしても良いそうです。

あなたなら、「語」という言葉でどんな歌を詠みますか。

では、はるか昔、『万葉集』に収められた歌の中から、「語らひ」という言葉が使われた恋の歌を一首、紹介しましょう。


あしひきの山橘(やまたちばな)の色に出(い)でよ
語らひ継(つ)ぎて逢ふこともあらむ


赤い色の実をつける山橘のように、思いをはっきり態度に出しなさい。
そうすれば、人から人へ語り継がれて、あの人に逢えるかもしれませんよ・・・と、恋する人の背中を押してくれるような歌です。

この場合の「語らひ」は、噂話ということでしょうか。
秋から初春にかけて、真っ赤な実をつける山橘は「十両」とも呼ばれ、お正月の縁起物として飾られることが多い植物です。

緑の葉っぱに映える赤い実を見て、恋する気持ちの意思表示をイメー
ジした万葉人(まんようびと)の感性には、ほれぼれしませんか。


あしひきの山橘の色に出でよ 語らひ継ぎて逢ふこともあらむ


さて、今年の歌会始ではどんな歌が披露されるのか、楽しみですね。


*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。

1月分は現在放送中に付き、もう少々お待ちください。


『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、

毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。



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