香りの散歩道


端午の節句は菖蒲の香りで


墨絵・朝野泰昌
今日、五月五日は端午の節句。

子どもの成長を祝う日としておなじみですが、この日に家族の無病息災を祈る行事は、平安時代から行われてい ました。

清少納言のエッセイ『枕草子』には、「せちは、五月(さつき)にしく月はなし。

菖蒲(しょうぶ)、蓬(よもぎ)などのかをりあひ たる、いみじうをかし。」という一節があります。


数ある節句の中でも五月(ごがつ)にかなう月はない。
菖蒲や蓬などの香りがして、本当に 素晴らしい……という意味です。

菖蒲湯に入って厄払いをする風習は、今も受け継がれていますが、当時は風呂に限らず、青々とした香りがそ こらじゅうに漂う菖蒲三昧の節句だったようです。

屋根の軒先に蓬を添えた菖蒲をズラリと並べて飾ったり、お香と菖蒲でつくった薬玉(くすだま)を吊るしたり。
夜は枕の下に菖蒲の葉を敷いて眠り、邪気を払うという風習もありました。

これほどまで人々にもてはやされた菖蒲には、よほど強い薬効があると信じられていたのでしょうね。

こうした話を聞くと、せめて菖蒲湯くらいは我が家でも……と、平安人(へいあんびと)の思いに寄り 添いたくなります。もしも菖蒲が手に入れば、お宅でもいかがですか。



*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。



*このコーナーは毎週水曜日に日本海新聞で掲載しています



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