数ある節句の中でも五月(ごがつ)にかなう月はない。 菖蒲や蓬などの香りがして、本当に 素晴らしい……という意味です。 菖蒲湯に入って厄払いをする風習は、今も受け継がれていますが、当時は風呂に限らず、青々とした香りがそ こらじゅうに漂う菖蒲三昧の節句だったようです。 屋根の軒先に蓬を添えた菖蒲をズラリと並べて飾ったり、お香と菖蒲でつくった薬玉(くすだま)を吊るしたり。 夜は枕の下に菖蒲の葉を敷いて眠り、邪気を払うという風習もありました。 これほどまで人々にもてはやされた菖蒲には、よほど強い薬効があると信じられていたのでしょうね。 こうした話を聞くと、せめて菖蒲湯くらいは我が家でも……と、平安人(へいあんびと)の思いに寄り 添いたくなります。もしも菖蒲が手に入れば、お宅でもいかがですか。