香りの散歩道 |
墨絵・朝野泰昌 |
5月から6月にかけて、麦畑が黄金色(こがねいろ)に染まることを、麦の秋と書いて「麦秋(ばくしゅう)」と言います。 収穫の時期を迎えた麦は、麦わらという副産物をもたらしてくれます。 その昔、良質な麦が穫れる地域では、麦わらを使った工芸品づくりが盛んでした。 夏の日差しから子どもたちを守ってくれる「麦わら帽子」もその一つです。 太陽の匂いがする帽子をかぶって、遊んだ思い出がある方は多いことでしょう。 麦わらを平たく編んでつくる麦稈真田(ばっかんさなだ)という紐(ひも)を、帽子のてっぺんになるところからぐるぐる巻いて、紐と紐が重なった部分を縫い合わせれば、麦わら帽子の出来あがり。 日本では明治の初めに、東京の大森(おおもり)で麦わら細工を手がける職人が、最初に作ったといわれています。 大森の麦わら細工といえば、江戸時代、東海道を旅する人たちがおみやげに買い求めた人気商品だったそうです。 つややかな麦わらが金色に輝く、美しい工芸品は外国人にも喜ばれました。 長崎の出島から江戸にやってきたドイツ人医師のシーボルトも、「クリスマスに飾るオーナメントのようにきれいだ」と喜んだとか。 日本の麦わら帽子には、そうした職人の技が受け継がれているのですね。 近ごろは、大人向けのおしゃれなものもたくさん登場しています。 今年の夏は、お気に入りの麦わら帽子といっしょに涼しい顔をして出かけませんか。 |
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毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。 香りの散歩道TOPへ / TOPへ / 歳時記へ |