香りの散歩道


あてなるもの


墨絵・朝野泰昌



写真から甘い香りが漂ってくるような、SNS映えするスイーツが人気ですね。この季節の主役は、なんと言っても「かき氷」でしょう。

かき氷の歴史をひもとくと、平安時代の女流作家・清少納言(せいしょうなごん)の名が浮かびあがります。
彼女は、随筆『枕草子』の中で、「あてなるもの」つまり、雅やかで上品なものとして、かき氷のことを書いています。

それによると、当時のかき氷は、削った氷に「あまづら」をかけて、金属製の器に入れたものでした。
「あまづら」とは甘味料のことで、甘茶蔓(アマチャズル)などの植物を煎じて作った、甘い蜜だったのではないかと言われています。

甘茶蔓といえば、健康茶ブームの先駆けになった薬草としても知られていますね。
ほのかな甘味と苦味があり、太陽の光を浴びた草のような香りがするお茶です。

清少納言が食べたかき氷にかかっていたのが、甘茶蔓で作られた「あまづら」かどうかは定かではありませんが、当時、甘い蜜はとても貴重なもの。
ましてや、氷を口にできるのは限られた人だったので、金属の器に盛られたかき氷は、さぞかし輝いて見えたことでしょう。

もしも清少納言の時代にSNSがあったら、アップしたかき氷の写真に「いいね!」が集まること間違いなし、でしょうね。

さて、氷も蜜も簡単に手に入る時代のみなさんは、どんなかき氷なら「いいね!」をしますか。


*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。


『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、

毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。



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