香りの散歩道


新六の桜餅


墨絵・朝野泰昌
 

桜の季節になると食べたくなる もの。
甘党の方にとっては、桜餅 もその一つでしょう。

花の香を 若葉にこめて かぐはしき 桜の餅 家づとにせよ
(はなのかを わかばにこめて かぐわしき さくらのもちい いえづとにせよ)

「家づと」というのは、わが家に 持ち帰る手みやげのこと。
花の香りを若葉に込めた、かぐわ しい桜餅を愛した正岡子規(まさおか・しき) の歌です。

この歌に詠まれたのは、小麦粉の薄い皮で餡を包み、塩漬けの桜の葉を巻いた関東風の桜餅で、長命寺(ちょうめいじ)とも呼ばれ ています。

江戸時代、向島(むこうじま)の長命寺というお寺で門番をしていた青年が、関東風の桜餅をはじめて作ったことに由来する呼び名だそうです。

青年の名は、山本新六(やまもと・しんろく)。
向島は、江戸時代から桜の名所で、春になるとお花見の人々で賑わっていました。

花が散って、葉っぱが落ちる季節になると、掃除をするのも門番である新六の仕事です。
毎年、毎年、落ち葉掃除に手を焼いていた新六は、桜の葉を何かに利用できないかと考えました。

そこで思いついたのは、若葉を塩漬けにすること。
薄い皮で餡を包み、塩漬けの葉を巻いて桜の香りを移したものを、長命寺の門前で売りはじめたところ、たちまち評判を呼んで江戸のヒット商品に。

三百年経った今も、愛され続けている新六の桜餅は、日本の春を彩る風物詩になっています。


*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。


『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、

毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。



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