香りの散歩道


藪入り


墨絵・朝野泰昌






旧暦の今日、7月16日は「薮入り(やぶいり)」という風習があったことをご存じですか?

その昔、商家に住み込みで働く奉公人は、年2回、お盆とお正月だけ親元に帰ることができました。
その習わしを、薮の深い田舎に帰ることから「薮入り」と呼ぶようなったといわれています。

奉公に出した子どもの帰りを、今か今かと楽しみに待つ親心は、落語の人情話にもなっています。
奉公人を親元に帰らせる雇い主のほうも、おこづかいや手土産を持たせて気持ち良く送り出したとか。

日頃は愛情を持って厳しく仕事を教え、それに応える奉公人も誠実に働いていたからこそ、こうした人間味のある主従関係が築かれていたのでしょうね。

落語の場合は、その心づかいが騒動のタネになりました。 
帰ってきた息子が汗を流しに風呂屋へ行っている間、親は息子が大金を持ち帰っていることに気づいて驚きます。
悪事に手を染めたのではないかと、心配したのです。

風呂から戻った息子を問いつめると・・・この落語の舞台は明治時代のようで、当時、ペストの病原菌を運ぶネズミを捕まえて役所に届けると賞金がもらえたそうです。
息子はそのお金を店の主人に預けていたのですが、「薮入りだから」と持たせてくれたのでした。

この話は、安心した親が主人への忠義とネズミをかけて、「これもチュウのおかげだ」と納得して終わります。
薮入りの風習はなくなりましたが、そこに流れていた人情は、いつまでも大切にしたいですね。


*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。

7月分は現在放送中に付き、もう少々お待ちください。


『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、

毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞に掲載されます。



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