香りの散歩道


柿渋の効果


墨絵・朝野泰昌
日本の秋を象徴するような風景といえば、皆さんはどんな風景を思い浮かべますか。

江戸時代の俳人・松尾芭蕉(まつお・ばしょう)は、こんな句を詠んでいます。

里古(さとふ)りて 柿の木もたぬ 家もなし

古い歴史がある里では、柿の木を持たぬ家はない。
昔はどこの家にも、柿の木が植えられていたのですね。
庭の柿の木に登り、色づいた実を食べたら、渋くてとんでもない思いをした・・・そんな昔語りも、日本の秋らしい思い出でしょう。
 
そして、この渋柿のシブを、ただの厄介者と決めつけなかったのは、日本人のすごいところ。
柿シブには、水をはじいたり、ものを腐りにくくする性質があることを知って、今でいうコーティング剤として活用したのです。
 
平安時代にはすでに、漆の下塗りに使われていた記録があり、その後、和紙を貼った傘や、雨の中でも修行をする山伏の着物などには、防水加工として柿シブが塗られていました。
 
近頃は、柿シブの消臭・抗菌作用が見直され、柿シブで染めたフキンが、エコロジーなキッチン用品として人気を集めているとか。
ちなみに、柿シブの正体はタンニンという物質で、赤ワインの健康ブームを巻き起こすきっかけになった、ポリフェノールの一種でもあります。
 
甘い柿にも、渋い柿にも、それぞれの良さがあることを発見した、先人の知恵の賜物ですね。


*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。



*このコーナーは毎週水曜日に日本海新聞で掲載しています



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