香りの散歩道



野の鳥は野に


墨絵・朝野泰昌

 春から初夏にかけて、森では野鳥が子育てに忙しい日々を送ります。

かわいいヒナのさえずりを耳にすると、元気に巣立っていけますよう に……と応援したくなりますね。

野の鳥と書いて野鳥と読む、この言葉が生まれたのは、昭和になってから。
昭和9年に日本(にほん)野鳥の会を設立した、中 西悟堂(なかにし・ごどう)による造語だといわれています。意外に歴史の浅い言葉なのですね。

中西悟堂は「野の鳥は野に」という自らの思 いを繰り返し人々に伝え、バードウォッチングを日本に広めた功労者でもあります。

籠の中の鳥を愛でるのではなく、自然の中にいるありのままの鳥を観察し て、その姿や鳴き声を愛でる。
この新しい愛鳥のすすめを体験してもらおうと、日本初の野鳥観察会を富士山麓の須走(すばしり)で開催しました。

そ の会には、鳥の研究者だけでなく、詩人の北原白秋(きたはら・はくしゅう)や民俗学者の柳田國男(やなぎだ・くにお)などの文化人も参加したそうです。

ち なみに、野鳥観察会は、のちに鳥を探索する会「探鳥会(たんちょうかい)」と名を変えるのですが、この探鳥という言葉を生みだしたのも中西悟堂です。

現在 では、日本野鳥の会の各支部が全国で開催する探鳥会は、年間およそ3千回。
延べ9万人近い人々が参加しているそうです。

「野の鳥は野 に」。

野鳥の研究と保護に力を尽くし、晩年まで、日本にサンクチュアリを作る夢を語っていた中西悟堂。
その思いは、野鳥を愛する多くの人々に受け継がれて います。



*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。


*このコーナーは毎週水曜日に日本海新聞で掲載しています



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