百人一首の歌留多で聞き覚えたという方も多いでしょう。
今年生誕100年を迎えた、随筆家の白洲正子(しらす・まさこ)さんが遺した数多くの著書の中に、百人一首について書かれたものがあります。
『私(わたくし)の百人一首』というこの本は、日本の伝統文化を見つめ続けた白洲さんが、幼い頃から歌留多取りで親しんだ百人一首を、六十の手習いのつもりで見直したことから生まれました。]
戸棚にしまってあった古い歌留多を取り出し、一枚一枚めくりながら、歌の背景や和歌の歴史など、百首に込められた古人(いにしえびと)の思いを読み解いていったそうです。
久方の……という紀友則の歌については、歌留多を取る人の間では知らぬ者はいない、としながら、平安時代にはさほど有名な歌ではなく、百人一首の選者、藤原定家(ふじわらのていか)によって、はじめてその美しさが発見された……と記されています。
そして、紀友則の素直な性格を物語る歌として、早春の香りを彷彿とさせるこの歌も紹介しています。
君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をもしる人ぞしる
白洲正子さんの独自の解釈が面白い『私の百人一首』。
春の一日、雅な言葉の響きを味わいながら、美しい日本文化を再発見してみませんか。
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