香りの散歩道


松は神が宿る特別な木


墨絵・朝野泰昌


 新年を清々しく迎えるための松飾り。
昔から、一夜飾りにならないよう、遅くとも今日30日には飾り付けましょうといわれています。

 正月に松を飾るのは、新しい年の守り神、歳神様(としがみさま)を我が家に迎えるため。

 冬の寒さにも緑をたたえる常緑の松を目印にして、迷わず我が家においでください……という心づかいがそこにあります。

 日本では古代から、松は神が宿る特別な木と考えられ、「まつ」の語源は神が天から降りてくるのを「待つ」という説もあります。
また、人々の生活にも役立つ木で、街道沿いに植えれば土を固めてくれ、松の実は食用になり、松ヤニは香料にも使われ、松葉をいぶせば虫除けにもなります。

めでたさの象徴であり、暮らしに馴染みの深い松は、数ある樹木の中でも最高位の木として「百木の長(ひゃくぼくのちょう)」と呼ばれてきました。

 万葉集にも数多く歌われている、松の力強い美しさ。
大伴家持(おおとものやかもち)は、たくさんの種類がある花はどれも美しいけれど、いつか色あせてしまう。
私たちは永遠に色あせない松の小枝を結んで、幸せを祈りましょう……と歌っています。

八千種(やちくさ)の 花は移ろふ
    常磐(ときわ)なる 松のさ枝を われは結ばな


 今年も一年、『朝野家・香りの散歩道』におつき合いいただき、ありがとうございました。
松のようにめでたく美しく、皆さまどうぞ良いお年をお迎えくださいませ。



*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。


*このコーナーは毎週水曜日に日本海新聞で掲載しています



香りの散歩道TOPへ
 /  TOPへ  / 歳時記へ