香りの散歩道


無限に広がる香りの世界


墨絵・朝野泰昌


 お香を作る工程で、最も難しく、最もクリエイティブなのは、香りの調合だといわれています。

コーヒーやウィスキーをブレンドするように、数種類の原料を何通りにも組み合


わせながら、イメージした香りを創りあげてゆく……。

デリケートな天然素材を使うお香づくりは特に、同じ種類でも微妙に異なる素材の個性を見極めなければなりません。
それがまた、無限に広がる香りの世界の面白さでもあるようです。

お香の原料といえば、すぐに思い浮かぶのは、樹木や草の根など香り高い植物でしょう。
また、現在は動物保護の観点からほとんど使われなくなった麝香(じゃこう)など、動物から採取する貴重な香料もあります。

では、海にすむ貝も香料になることをご存じですか。
貝のお香、貝香(かいこう)です。
貝香は、バイガイの一種である巻貝のフタを粉末にしたもので、おもに香りを長く保つための保香剤(ほこうざい)として使われます。

良い香りは儚(はかな)いもので、植物性の香料は揮発性が高く、すぐに香りが飛んでしまいます。
そこで、香りの発散を抑えて長持ちさせる保香剤を調合するのですが、その代表的なものが貝香です。

海からの贈りもの、貝香に支えられている天然素材のお香づくり。知れば知るほど、奥が深いですね。



*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。



*このコーナーは毎週水曜日に日本海新聞で掲載しています



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