香りの散歩道


アオギリのメッセージ


墨絵・朝野泰昌

皆さんは、広島市の平和記念公園を訪れたことがありますか。

64年前の8月6日。一瞬で焼き尽くされたまちには今、緑がイキイキと輝いています。

その中に、爆心地からおよそ1.3キロメートル離れた広島逓信局(ていしんきょく)の中庭で被爆し、のちに平和記念公園に移された木があります。


 熱線と爆風を受け、幹がまっ黒に焼けてえぐられたアオギリの木。
被爆直後は、もう蘇ることはないと思われていた木です。

ところがある日、焼け焦げたカラダから小さな緑の芽が……。
奇跡のような新しい命の芽生えでした。
その生命力に勇気づけられ、失いかけた希望を取り戻すことができた人も大勢いたそうです。

あの日を生きぬいた被爆樹木を守ろうと、1973年、平和記念公園に移植されたアオギリは、やがて実をつけ、小さな種をたくさん落としました。
そして、この種から育った苗木は、和の尊さを伝える被爆アオギリ二世として、日本各地へ、世界へと旅立っています。

この実話をもとに、1996年には『被爆アオギリ二世物語・アオギリのねがい』という絵本も生まれました。
おかあさんアオギリとその子どもたちは、私たちにどんな願いを託しているのか、やさしく語りかけてくれるこの本は、出版から7年後の2003年に、英語の訳を加えた2カ国語の絵本になりました。

いつの日か、世界中の子どもたちに、アオギリのメッセージが届くといいですね。



*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。

8月分は放送中につき、もう少々お待ちください

*このコーナーは毎週水曜日に日本海新聞で掲載しています



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