香りの散歩道


「母と子の三月ひなのつき」 


墨絵・朝野泰昌

 もうすぐ三月。
桃の節句を指折り数えて待ちながら、ひな人形を飾っていらっしゃるお宅も多いでしょう。

 児童文学者で『ノンちゃん雲に乗る』の作者としても、おなじみの石井桃子(いしい・ももこ)さんが、昭和38年に発表した童話『三月ひなのつき』にも、毎年この日をワクワクしながら待っている女の子が登場します。

主人公のよし子ちゃんは10歳。

 まだ、ひな人形を買ってもらったことがありません。
なぜなら、お母さんは自分が子どもの頃、大切にしていたひな人形があまりにも素敵だったので、よし子ちゃんに新しい人形を買ってあげたくても、気に入るものが見つからないのです。

そのお母さんのひな人形は、空襲で焼けてしまったので、もうどこにもありません。

 今年こそ、ひな人形を買って欲しいとよし子ちゃんにせがまれ、二人でデパートに行くのですが、お母さんにはどれも同じような規格品(きかくひん)に見えてしまいます。

 そしてまた、三月三日がやって来ました。

学校から帰って来たよし子ちゃんを、玄関に飾った桃の花と菜の花の匂いが出迎えてくれます。
さてその日、よし子ちゃんはどんなひな祭りを過ごしたのでしょう…。


 読み終えたあと、心がぽかぽかしてくるような、石井桃子さんの『三月ひなのつき』。
できれば親子で読んでいただきたい、愛情あふれる物語です。



*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。



*このコーナーは毎週木曜日に日本海新聞で掲載しています



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