香りの散歩道


「雪にほころぶ梅の花」 


墨絵・朝野泰昌

  「新しき 年の始(はじめ)の 初春の
 今日降る雪の いや重(し)け吉事(よごと)」

日本で最も古い歌集『万葉集』の最後を飾る歌です。

今から1250年前に、大伴家持(おおとものやかもち)によって詠まれたこの歌の舞台が、因幡国(いなばのくに)、鳥取県だということは皆さんよくご存じでしょう。

 新年に降る雪は、豊作の兆(きざ)しといわれており、年の始めの今日を降りしきる雪のように、良いことがいっそう重なるように…と願いを込めた歌です。

家持の時代は旧暦の正月ですから、今頃の季節に詠まれた歌かもしれませんね。

 1250年の時を超えて、今もなお愛され続ける万葉集の世界。
全20巻の中には、早春にふくよかな香りを漂わせる梅の花と、雪を詠んだ歌も数多く納められています。

 その代表ともいえるのが、大伴家持の父、大伴旅人(おおとものたびと)が、太宰府に赴任していた天平2年、730年の正月に梅の花を愛でながら詠んだといわれるこの歌でしょう。

「わが園(その)に 梅の花散る ひさかたの 
 天(あめ)より雪の 流れくるかも」

庭の梅の花が、はらはらと散っている様子を見て、旅人は天(てん)から雪が流れて来るようだと表現しました。
 雪の中、ほころぶ梅の花を見つけたら、万葉人(まんようびと)に倣(なら)って思いを歌にしてみませんか。

*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。



*このコーナーは毎週木曜日に日本海新聞で掲載しています



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