香りの散歩道


「おもてなしの源流」 


墨絵・朝野泰昌

 「おもてなし」という言葉を聞いて、皆さんはどんな場面を思い浮かべますか。

ていねいに点てられた一服のお茶、そこはかとなく漂うお香の香り、そして、「ようこそ」の気持ちが伝わる笑顔も、心に残るおもてなしでしょう。

 日本に古くから伝わるおもてなしの精神を、現代に活かす道を探った一冊の本があります。

 タイトルは『おもてなしの源流〜日本(にほん)の伝統にサービスの本質を探る〜』。

旅館や茶道、花街(はなまち)、きものなど、それぞれの道の達人に話を聞き、おもてなしの現場を取材した本です。

 そこから見えてきたものは、主(あるじ)と客(きゃく)が心を通わせて一つになる「主客一体(しゅかくいったい)」という言葉に象徴される、日本のおもてなしの大きな特徴です。

 たとえば、茶道では「しつらい」「ふるまい」「よそおい」の3つの要素を、その場にふさわしく整えることがおもてなしの基本です。
しつらいとは、趣向を凝らして部屋を飾り付けること。
ふるまいとは、態度や身のこなし、よそおいとは、身なりを整えることですね。
そして大切なのは、もてなす側のこうした趣向や心配りを、もてなされる側が感じ取ること。
つまり、主客一体となってこそ、共に心豊かな時間を過ごすことができるのだと、この本は教えてくれています。
 『おもてなしの源流』。
今こそ見直したい、日本の心にふれることができる一冊です。


*毎週水曜日・FM山陰.他で放送中  ↓mp3です。 wmp等でお聞き下さい。



*このコーナーは毎週木曜日に日本海新聞で掲載しています



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