ヒゲおやじの絵日記/心の旅人
第40話 「あーあー」
絵と文・猪熊燻太郎/提供・朝野家
 つい最近のこと、久々に出会った知人が、『ヒゲおやじの絵日記』を見たぜ、と言ったので感謝し、お礼を伝えた。しかし彼の口から次々と出てくる痛い言葉に、アチャーと思いながら、貴重なご意見とご忠告として受け賜った。
 その一つ、「文もダラダラ長ぎゃあし、絵もあなゃー細きゃーこと描いたら見てもえらーなるがな」。ボクはため息が出た。新聞の貴重なコーナーをいただき早くも二年が過ぎる。仕事に疲れた身体に気合を入れて描くこと深夜の一時、二時はザラ。締め切り前夜ともなると夜が明ける。その都度、心に現れる黒い影。ニヤリと笑いながら、『お前はバカだー、お前の仕事は燻製屋だぞ。画家か、作家気取りか…そんなこと続けて何の意味がある。そんなもん、誰も喜ばんぞ…』誘惑の影に笑われながら朝になることしばし。そして誘惑の影のささやきに納得し、もう止めようと思いながら、また描いてしまった。
 ほめられたくて描く気は毛頭ない。ほめられたこともない。しかし、いつも思うことがある。何事でも、どなたでも言えることだが、一生懸命がんばっていると目立ってしまうのだ。そうなると周りは穏やかな気分にはなりにくく、評価したがらん雰囲気についなるものだ。ここの所が問題なのだ。ド田舎の悪リーィ気質だ、風土だ。この気質を背負ったまんま、インテリぶった気持ちで町づくりなんて出来るもんか。
 エーイッ、ぐちってもしかたがない。現実から離れて、のーんびりと太古の昔に想いをめぐらせてこようと思い、浜坂から諸寄、居組の七坂八峠を通って鳥取の海岸、砂丘を家内と歩いた。夏中、若者や子供たちが遊び回わった浜辺はもう誰もいない。美しい砂浜の至る所に散乱している空ビン、ペットボトル、ポリ袋、とにかく凄い。ゴミの間から顔をのぞかせている貝がらの美しいこと。古代の人たちは、貝がらの美しさから貨幣として使っていたという。
 何百億年も昔から、海の底から宇宙を見つめていた貝。砂浜に打ちあげられた無数の貝がらを拾い集めながら、ゴミだらけの砂浜が泣いているように思った。
  人間の高慢…
  人間の傲慢…
  人間のわがまま…
いくらスーツで身をまとってみても…
ピカピカの高級車を乗り回してみても…
宝石で身を飾っても…
知識と理屈で人をおし倒してみても…
  貝がらの美しさにはかなわない。
 『求む。このコーナーに代わって執筆しようと思う勇者は現れよ』

*このコーナーは毎週日本海新聞で掲載しています

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