ヒゲおやじの絵日記/心の旅人
第35話 おやっさん、空を飛ぶ
絵と文・猪熊燻太郎/提供・朝野家
 おやっさん、岡山の蒜山(ひるぜん)高原にハム工場を建てよう、来てくれ。そこで日本一の作品を作ってくれ。突然の電話が届いた。七月二十八日のことだった。
一本の電話から
 彼は十年前、村岡町教育委員会の中村典男副課長の紹介で知り合った人だった。広瀬之宏。大阪で(有)ハーディセカンドの社長だ。中小企業の経営指導、ベンチャービジネス指導に多忙な日々を送っている。三ケ国語を話し、芸術的センス抜群。情愛に満ちて、夏も心も熱々の男だ。
 蒜山高原の農場にハーブ園を持ち、障害者の若者と陶芸に美を追求しながら、その若者たちに自活の道を教えているという。
 高原で日本一の味を作ってくれ、そしてこの子らに生きる勇気と希望を与えてくれ。広瀬社長は電話の向こうで語りかけた。
輝く目標に照準を
 世の中には障害者を区分けし、ランク付けし、福祉という名をかぶせて優位な立場から見下し、優越感にひたりながら金儲けしている連中がいる。
 障害者って何?人間って何?肉体的ハンディがあるから障害者か。障害者は社会のはみ出し者なのか…。
 気の毒な障害者の作品だから…かわいそうな障害者の作品だから…同情して買ってもらう品物を作るな。ハンディは、他の者には創り出せない物をつくるために、健常者には表せないすばらしい生き方を示すために与えられているんだと思え。自活するんだ。福祉という言葉に甘えて生きるな。日本一の品物を作って税金を払える立場になれ。胸を張って生きろ。出来るさ。やってみろ。輝く目標に照準を合わせて生きる時、肉体的にも精神的にもハンディキャップから解放される。広瀬社長は若者に語るのだという。
飛べ!大空へ
 広瀬社長の話を聞きながら思った。人は感激、感動したとき、初めて身体の中を本当の血が流れるのかも知れない。そうだ。そうなんだ。人間は障害があろうとなかろうと、温もりを与えられるから人間なんだ。人は尊敬し、仲間を思い合えるならどんなに幸せだろう。もしかしたら、障害者とされた人たちの方がどれだけ真剣に生きようとしているのかも知れない。たまたま健常者の立場の人たちは、不平不満の日々を送っている場合が多い。せっかくの命、光陰矢のごとし、あっという間に老いる。

生きている限り
 感激して泣きたい…
生きている限り
 感動して笑いたい…
強い夢は
 きっと実現する

といって広瀬社長は電話を切った。
 よっしゃっ、広瀬号に乗って大空を飛んでみるか…
 古い昨日よグッドバイバイ。

*このコーナーは毎週日本海新聞で掲載しています

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