ヒゲおやじの絵日記/心の旅人
第29話 お化け食堂の怪2
絵と文・猪熊燻太郎/提供・朝野家
お化け食堂
 大きな月がどっこいしょと、山の上に腰を下ろすと、ボクはお化け食堂に行った。おじさんは、お化けたちと打ち合わせの最中だった。
◆いざ、覚悟!◆
 いよいよ今夜はエラーイ先生の化けの皮をヒンむくためにお化けの力を借りるということらしい。おじさんは、今夜のために妙薬を発明したのだ。
 ちょうど、今ごろは町の歓迎祝賀会会場で、町のそれなりの主だった人たちがエラーイ先生を囲み、おベンチャラを言ってはお流れを頂戴して喜んでいる最中なので、全員お化け食堂を後にした。
◆先生の化けの皮◆
 歓迎祝賀会会場の近くで、ボクは不安でたまらず、化けの皮をヒンむくのか、と尋ねた。おじさんはニヤニヤしながら話してくれた。
 『なあに欲の深い人間は、地位や権力お金の味を一度しめると、失うことをおそれてさらに欲が出るもんさ。人間、欲が出るとどこかにスキが生じる。得体の知れない大きな物に出会うと、腰を抜かすもんさ。われを失う、ポカンと口が開く、魂が抜ける、それをヒョイと失敬する。秘伝の妙薬を放り込む、完了ってわけさ。坊主、見てな』と言うと、たくさんのお化けに息を吹きかけられた。
◆大きな古ダヌキに◆
 もの凄い白い煙が立ちこめた瞬間、おじさんの顔が大きな天狗のようになって、祝賀会会場の中にドーン、バリバリーッと音を立てて突っ込んで行った。
会場の中からどよめきと悲鳴が聞こえた。入ってみると、エライ先生もみんな口を開けて気絶していた。後はお化けたちが手はず通りだ。おじさんがエライ先生の口の中に妙薬を放り込んだら、先生のお尻から大きなシッポが生えて、見るみるうちに大きな古ダヌキに変身してしまった。
◆欲に眩んだ人々◆
 神様に従うようにしてきた人たちは、声一つ出せないで放心状態になってしまいました。帰りながらボクはおじさんに話を聞きました。欲が深いと目がフシ穴になって、人間とタヌキの見分けがつかなくなるそうです。お化けの姿が見えないよと聞くと、『お化けは異界に帰ったのさ… 人から差別され、避けられた人々の嘆きやくやしさが形になり、夜中に現れるのさ…』
 夜が明けると、ボクは走ってお化け食堂に行ってみました。そこにはおじさんの姿はありませんでした。もう何年も人が住んでなく、ペンペン草が生えた荒れた倉庫でした。近所の人が朝早く大きなキツネが出て行くのを見たと話していました。
(おしまい)

*このコーナーは毎週日本海新聞で掲載しています

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