ヒゲおやじの絵日記/心の旅人
第28話 お化け食堂の怪1
絵と文・猪熊燻太郎/提供・朝野家
お化け食堂
 お化け食堂を知ってるかい。信号から三軒目のオンボロ食堂のことさ。昼間でもカーテンが閉まっているので、近所の人も不思議に思っている店なのさ。ところが、真夜中になり、大時計がけだるい音で午前零時を告げるころになると、ボンヤリと明かりがつき、中から妙な話し声がするとの噂が広がり、気味悪がって、誰も近づかないのだそうだ。
◆食堂の中には…◆
 ある夏の真夜中、ボクはお化け食堂の窓から、そっとのぞいて見たのだ。すると中から、長いヒゲを伸ばし、くたびれた目をしたおじさんと目が合ってしまった。
 おじさんは、見たなーッという目つきでボクをジロリッとにらんだのだ。ボクは震え上がった。ドンッと戸が開き、おじさんは大きな声で、坊主、中に入れと言ってボクの首スジをつかんで引きずり込んでしまった。お化け食堂の中に初めて入れられて見て、ボクは腰が抜けるほど驚いた。
◆お化けの嘆き◆
 目の前に大勢のお化けがボクを取り囲んで、ジロジロ、ニヤニヤして見つめているのではないか。おじさんは、ドスの効いた声で、みんな良いお化けだから心配するな、と言ってきつねうどんを食べさせてくれた。なんでも満月の夜はお化けの寄り合いがあるのだそうだ。おじさんと、お化けの会話を聞いていると、近ごろ世の中が乱れて悪くなっていることを嘆いているようだ。
 このままだと大変なことになるから、おじさんはお化けと力を合わせて、自分のふところしか肥やさない、悪い大人たちの魂を抜き取り、ある種の煙で燻し、エキスを作るのだそうだ。
◆魂の妙薬◆
 正義面して、もっともらしいこと言うくせに、ドケチでもらうことの大好きな世の中のお偉いさんの料理に、そのエキスを一滴たらすだけで人が変わったように裏心のない良い人間に変えられる、という不思議な妙薬を発明したというのだ。
このおじさんは、世間の噂と違い、とても良い人だと思った。おじさんは次の満月の晩にまた来いと誘ってくれた。なんでもその晩は町長さんや町議会議員の人や町のそれなりの人たちがペコペコして頭の上がらない、エラーイ先生が帰ってくるのだそうだ。おじさんはそのエラーイ先生の魂を抜き取り、発明した妙薬を飲ませるのだそうな。
◆おじさんの正体は?◆
 エライことになるぞ。町中大騒ぎになるかも知れないぞ。一体おじさんは何者なんだろう。おじさんと別れる時、お尻に大きなシッポがぶら下がっていたような気がしたのだが…
(続く)

*このコーナーは毎週日本海新聞で掲載しています

ヒゲおやじの絵日記TOPへTOPへ新着情報へ