ヒゲおやじの絵日記/心の旅人
第26話 朧月夜と空飛ぶマント
        〜夢之助シリーズ2〜
絵と文・猪熊燻太郎/提供・朝野家
空飛ぶマント
 夢之助が大猫に会いたいなぁと思っていると、窓を叩く音がした。振り返ると、なんと、大猫がこっちを向いて、ヨオッと手招きをしていた。
◆街の夜空で◆
 大猫と目が合った瞬間、不思議なことに吸い寄せられるようにガラス窓をつき抜けてしまった。気が付くと、夢之助は大猫の背中にしっかりとつかまり、おぼろにかすむ月を横目に夜空を飛んでいた。
 大猫には、何でも話すことができる夢之助は、昼間お父さんに叱られたこと、友達にからかわわれてバカにされたことなど、くやしそうに話しかけた。
◆大猫のひとり言◆
 その時、大猫は魔法のマントをひる返して、一気に急降下を始めた。眼下の美しい夜の街がグルグルと回った。
     ◇     ◇     ◇
 いいかい、夢之助、どんなにくやしくても人を恨んではいかんよ。おいらも捨てられてから長年くやしい思いを噛みしめる夜が続いた。人間の薄情を恨んだ。でもなあ、からかわれたり、バカにされたりする時はそれなりの理由(わけ)があることに気付いたよ。
◆節は太けりゃ太いほど・・・◆
 世の中はそんなに甘くないものさ。耐え難い屈辱やくやしさ、つらさを味わうことで強くなり、大きくなり、明るくなって育つのさ。試練を乗り越えた時、人は感謝の思いに変われるものさ。人の一生はな、竹のようなもんさ。竹が空に向かって伸びる時、節が必要なんだ。節が太けりゃ太いほど、高く大きく伸びていけるのだよ。夢之助にとって困難と思う時、失敗しても逃げずに挑戦して闘う、もがく、努力する。みんな節を太くして伸びる要素なんだよ。
◆心の胃袋で反芻を◆
 振り返ればおいらもずい分長く生きてきたが、困った時、苦しい時はふらりと竹林を歩いて、その言葉を噛みしめるのさ。人間はな、心という大切な胃袋があるだろう。教わったり、注意されたり叱られたりしたことを反芻して何度も噛みしめなければ育たん動物なんだよ。
     ◇     ◇     ◇
 大猫はひとり言のように話し終えると、「明日はいい天気だ」と言って、寝静まった街の上を楽しそうに、飛んで行った。

*このコーナーは毎週日本海新聞で掲載しています

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