ヒゲおやじの絵日記/心の旅人
第20話 夢の助 空を飛ぶ
絵と文・猪熊燻太郎/提供・朝野家
夢の助
*カラーで彩色したイラスト「ヒゲおやじの近況報告」

夢之助は気が付くと知らない街の路地裏を歩いていました。心細くなり途方に暮れていると、「オイ、どうしたんだ」と声がするので、振り向くと大猫が後ろに居ました。ずい分大昔から生き続けていて、この界隈(かいわい)のことはすべて知り尽くしているという大猫は、空飛ぶ不思議なマントを持っているから家まで送ってやると言いました。
◆たくましく生きる◆
大猫は夢之助をおんぶすると呪文を唱え、ふわりと街の上に浮き上がりました。眼下に美しい山や海が流れて行きます。大猫は空を気持ち良さそうに飛びながらいろいろな話を聞かせてくれました。
昔、何匹か生まれた子猫の中で一番醜かったので、知らない街の片隅に捨てられたのだそうです。雨に打たれ、石を投げ付けられながら生きている間に、悲しみや苦しみのどん底の中でもたくましく明るく生きる知恵を学んだそうです。
「ホラ、下を見ろ」と大猫が指差しました。一人の若者が走っているのが見えます。若者は子供のころからいつもどんジリで人から笑い者にされていましたが、いつかきっと一位になりたいと夢を燃やし続け、毎日練習を怠りませんでした。とうとう一位になってしまったそうです。
『どんジリから出発した者は強いもんだよ』
『勉強だって何だって心の底から分かりたい、良くなりたいと本心思って、人の何倍も頑張ることだ。見栄をはらず格好付けずに頑張ることだ』。大猫は独り言のように話しました。
◆夢と努力◆
「坊やは夢之助と言ったな。実にいい名前だ。おいらと坊やと同じ生き物さ。夢ってやつは、努力というエサを与え続けなければ大きく育たんものさ」。
大猫は夢之助の家の近く降りると「アバヨ」と言って、夕焼け空のどこかに消えてしまいました。夢之助は不思議な大猫にまた会いたいな、と思いながら西の空を見つめていました。

*このコーナーは毎週日本海新聞で掲載しています

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