ヒゲおやじの絵日記/心の旅人
第18話 六月の花嫁
絵と文・猪熊燻太郎/提供・朝野家
6月の花嫁
聞くところによりますと、神様は土で一人の男を造りました。
口から息を吹き込んで美しい森に囲まれた湖のほとりにそっと置かれました。
男は湖で魚を捕ったり、湖のほとりを耕したりして静かに暮らしていました。
◆男の支え人に◆
梅雨のさわやかな風が湖の上をかけ渡る音や、空を嬉々(きき)と飛び交う
小鳥たちや山を駆け巡る動物。野山に咲き乱れるさまざまな花が
男の唯一の話相手のほか、何もかもが静寂そのものでした。
そのうち、雨が何日も何日も降り続き、男は外に出ることもなく
窓から外を眺めるばかりでした。森の動物たちも男の小屋に遊びに近づいて来ません。
男はだんだん寂しくなって泣き出したい気持ちになりました。
男の様子を眺めて、神様は男が一人でいることは良くないと言われて、
男にふさわしい助け人を造ろうと思われました。
神様は男を深い眠りに下ろされてから男の左胸の中に手を差し入れて
アバラ骨を一本抜き取ると、その骨でアッという間に女を造られました。
神様が女を男のそばに置いて口の中に息を吹き込むと、
女は涼しい目を静かに開きました。それから神様は女に語りかけました。
「あなたを男の頭の骨で造らなかったのは、あなたが男の上に出ないように…、
あなたを男の足の骨で造らなかったのは
あなたが男の奴隷(どれい)にならないように…。
楽しい時も、悩み苦しむ時も男の心のそばにいて彼の良き支え人となりなさい―」
と語られたそうです。

◆ふる里探す旅◆
やがて二人の間に玉のような男の子が生まれ、
大きな樹のようにスクスクと育ったそうです。
ずっと昔から六月に結婚すると幸せになれると言い伝えられています。
いずれにしても、男と女が愛し合うということは、男は自分が失った骨を、
そして女は自分が造られたふる里を探し求める旅人なのかもしれません。

*このコーナーは毎週日本海新聞で掲載しています

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