ヒゲおやじの絵日記/心の旅人
第17話 神様と兄弟と
絵と文・猪熊燻太郎/提供・朝野家
兄弟
 それは遠い昔、ある都にとても偉い方が居た。この偉い方は神さまのような力を秘めてもいた。この年は十年に一度の大神宮祭の行事の年だった。
◆褒美のおねだり◆
その日は空もよく晴れて、遠い各地から大勢の見物客が訪れ、都はにぎわった。偉い方の館から大神宮まで長い行列が続き、先頭から最後尾まで霞(かすみ)がかかって見えないほどであった。
牛に引かれ、飾りたてた偉い方の乗った車が大神宮の大門にさしかかった時、見物人の中から子供が飛び出して来て、牛に踏みつぶされそうになった。大観衆が『アッ』と声を出し、騒然となったその時、観衆の中から二人の若い兄弟が飛び出して、一瞬のところで子供を助けあげた。偉い方の牛車も無事大神宮へ入って行った。
祭りが終わって数日後、子供を助けた兄弟と母親は偉い方の館に呼ばれ、お誉めの言葉と名誉の品を頂いた。しかし、母親は、息子たちをもっと誉めてやってほしいとせがんだ。偉い方は『よし、よし』と、明朝に最高の品を与えることを約束した。
母親は大喜びし、親戚、友人、知人を集めて飲み食いし、ドンチャン騒ぎをして「良かった、良かった」とその晩、すっかり良い気分になって寝たのであった。
◆最高の幸せ◆
朝早く血相を変えた母親が、偉い方の館に駆け込んで興奮して言った。「最高の品を下さるはずなのに、朝方、兄弟二人とも死んでしまうなんて・・・。約束が違う」と訴えた。神さまの力を秘めた偉い方は母親をしげしげと見つめて、「人は最高の喜びの後、そのようにして死ぬのが幸せだと思うがのう」と静かに言った。

*このコーナーは毎週日本海新聞で掲載しています

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