ヒゲおやじの絵日記/心の旅人
第13話「…たとさ(下)」
絵と文・猪熊燻太郎/提供・朝野家
たとさ
帰ったとさもどったとさ。
おだんご作りのおじさんが、
スタコラサッサと消えてから
どこかでひそかに磨いた腕を、
おにぎり山のてっぺんで
鳴らすとさ生かすとさ。
だあれも忘れた三年三月。
男の一念見つけた極意。
これで勝負だおいらの夢を、
叶えておくれよ三日月さん。
渡る三日月振り返り、
毎夜気になる山の上。
一度寄るから食べるから
作っておくれよおいしいだんご。
やみつきこめつき三日月だんご。
山の間(あいだ)にどっかと降りて、
ケラケラ笑っておだんご食べて。
それじゃあ出かける西の空。
さいならアバヨまた来るあした。
仲よしこよしの三日月だんご。
たちまちこの街次の街、
噂が次々広がって。
お山はお客で金の山。
おじさん街中の人気者。
今夜はおごりだ腹いっぱい
食べてお帰り三日月だんご。
当てたとさ当てたとさ。
おだんご作りのおじさんが
億万長者になったとさ なったとさ。
たちまち噂を聞きつけて。
お久しぶりですお元気で。
手の掌返してぺコリンコ。
米つきバッタの銀行マン。
預けて下さい当店へ。
ほんの手土産(てみやげ)気持ちです。
カバンの中から取り出した
短いラップに粉石ケン。
厚くて食えぬつらの皮。
薄くて使えぬゴミ袋。
預けて驚く鼻クソ金利。
借りればイバルし預けりゃぺコリン
強きを助けて弱きをくじく、
これじゃあ世の中 逆さまだ。
駅のベンチと銀行の冷たさ痛さは 世界一。
三日月だんごも世界一。
今も神代(かみよ)の昔から
お金が神さま仏さま
あんたの言葉で今がある
一度でいいから言わせておくれ。
さあ持ってけ銀行大ドロボー。
おだんご作りのおじさんが
おにぎり山てっぺんで
いったとさいったとさ。
「おわり」

*このコーナーは毎週日本海新聞で掲載しています

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